シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 父と母の結婚パーティーはお開きになり、私は娘を抱っこしたまま慧悟さんに寄り添っていた。
 娘は私の腕の中で、胸を上下させながら寝息を立てている。

「素敵な式だったね」

 言えば、慧悟さんは「ああ」と言う。

「希幸は、こういうこぢんまりとしたというか、アットホームな結婚式の方が好き?」

「えっと、私は――」

 ――慧悟さんといられるなら、どんなのでも素敵だと思う。

 そんな言葉は恥ずかしくて言えずに、黙ってしまった。

「希幸と僕との式は、もっと大きなものになる。嫌と言われたら、どうにかしないといけないから」

「嫌なわけない!」

 慌てて言い返した。

「でも、心配でもあるの。ぽっと出てきた姫川家の娘が、幾美家と結婚だなんて。本当に大丈夫かなぁ……」

 慧悟さんは一年前、彩寧さんとの結納も済ませ、レセプションパーティーまで行ったのだ。
 それを今さら白紙に戻し、私と結婚だなんて。

「それは父さんと母さんが何とかしてるから大丈夫。あの二人、希幸に負い目をかなり感じてるみたいだから。僕と彩寧の結婚も急かそうとしてたし、だから面倒事はあの二人に任せておけばいいよ」

「でも……」

「もしも、心配なら――」

 慧悟さんは、俯いてしまった私の顔を覗き込む。

「――最高のウェディングケーキを作ってよ。『僕たち』の」

 ニコッと微笑まれれば、あの日の慧悟さんと目の前の慧悟さんが重なる。

「はい!」

 私は、あの日の約束を果たさなくては。
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