シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
Epilogue
 時は過ぎ、11月――。

 すっかり大きくなった我が子にドレス風のロンパースを着せる。ヘッドドレスを着せると、まるで小さなお姫様だ。

 ドレスのチュールについたお花の刺繍を指で弄りながら、「マンマン」と私を呼ぶ姿は愛しさしかない。

「あー、もう可愛いなぁ」

 やってきた慧悟さんが、背後で言う。

「ね、可愛いよね! 最高に可愛い!」

「違う。純白のドレスに身を包みながらも、娘にデレデレしてるお姫様の方」

「えっ! 私!?」

 驚き振り返ると、慧悟さんはいたずらに成功したみたいに楽しそうな顔をする。
 けれど、真っ白なタキシードがとても格好いい。

 思わず見惚れてしまい、三秒。

「見過ぎ」

 耳元で呟かれ、そのままちゅっと耳たぶにキスを落とされた。

「この子はもう預かっていいわね」

 慧悟さんの後ろにいたらしい、お母様が娘を抱き上げる。

「あばあば、あーば」

 笑いながらお母様の顔に手を伸ばす我が子。
 お母様は育児に積極的に関わってくれて、そのお陰で娘もお母様に慣れっこだ。

 お母様も優しく娘に笑いかける。
 そのまま、控室を出ていってしまった。

「さて、僕らも行こうか。お姫様」

 いつかのように、差し出された手を取る。
 けれど、私はもう迷子じゃない。
 ちゃんと、慧悟さんの隣を歩いていけるんだから。
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