シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 父の腕に手を添え、ゆっくりとバージンロードを歩く。ブーケには、お母様が持ったのと同じローズマリーを使った。

 参列者たちは皆どこかの名家の方々なのだろう。
 ローズマリーの爽やかな香りを嗅ぎながら周りを見渡せば、華やかなドレスが目に入る。

 今日の主役は私であるのに、こんな平凡な私が主役でいいのか不安になる。気後れするほどの高価なドレスは、やっぱり私には似合わないんじゃないか。コックコートの方が似合うんじゃないか――。

「胸を張りなさい。希幸は、立派な姫川家の娘だよ」

 父に言われ、曲げてしまった背筋をしゃんとする。
 目の前には、愛する人がいた。
 それだけで、世界が輝いて見える。

 その瞬間、先ほどまでの不安が消えた。
 彼と結ばれるのは、私だ。

 二度も三度も諦めた、私の愛しい人。
 そんな雲の上の人との結婚式を、今日こうして迎えられるなんて。

「希幸、とても綺麗だ。世界中の誰よりも、一番愛している」

 慧悟さんのくれた言葉を胸に刻む。

 ――誰よりも、一番幸せだ。

 涙で震えながら、私は世界一愛しい人へ、誓いのキスを贈った。
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