シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 やがて切り分けたケーキを、母が私の口にそっと運んだ。
 瞬間、今まで通り過ぎてきた日々が脳裏に浮かび、ぶわっと涙が溢れてしまった。

 霞んだ視界で会場を見渡せば、大好きな、大切な人たちが目に入る。

 母の肩を抱き寄せ、優しく寄り添う父。腕を組み、笑っている料理長。涙ぐむ彩寧さん。堂々とした佇まいで微笑む、お父様にお母様。そして、お母様に抱かれてキョトンとしている娘。

 視線を右隣に移し見上げれば、大好きで愛しい、私の旦那様の優しい笑顔。

 あの日、願うだけだった叶うはずのない世界が、今、目の前にある。
 きっとこの先も、甘くとろけるような喜びと幸せが続いていくのだと思う。

「希幸。僕はもう、希幸を離さないからね」

 慧悟さんからの愛の宣言は、どんなシュクルリーよりも甘くて。

「私も、もう絶対離れないから……っ!」

 私は涙とともに、その幸せの味をいっぱいに頬張るのだった。



〈終〉
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