シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 二人は終始、私のデセールを褒めてくれた。
 プレートを下げ、厨房に戻った私は二人の前で笑うことができたことに安堵していた。

 二人のウェディングケーキを作る約束も、ちゃんとした。
 後日、正式にオーベルジュに連絡がくるだろう。

 厨房の流し台にいた、見習いの後輩にお皿を手渡す。

「前埜さん、今いい? 明日のお客様のデセールなんだけど――」

 料理長に呼ばれ、慌てて「はい!」と私は彼の後に続いた。

 *

 仕事を終えた私は、まだ厨房にいた。
 その隅にある作業用の机の前で、スケッチブックに鉛筆を滑らせる。

 慧悟さんと彩寧さんの、ウェディングケーキのデザイン案を考えていた。
 本当は正式に依頼が来てからすべきなのだろうけれど、今日会った二人のイメージのままにデザインしたかった。

 頭にあるのは、気品に溢れつつも優しく温かい二人のイメージ。
 私が幼いころから優しかった二人は、今もなお優しかった。
 
 そんな二人の門出を祝う、ウェディングケーキ。
 純白のタキシードとドレスに身を包み、これからの幸せを誓い合う二人を想像すると、やり場のない悔しさに飲まれそうになる。

 だから、無理やりにデザインに集中することで、自分にも二人を祝福したい気持ちがあることを再確認させたかった。
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