シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
切ない再会
1 デセール部門のシェフとして
「本日のミーティングを始めます」
オーベルジュの総料理長・巽料理長の言葉に、私は今日の予約者名簿をぱらぱらとめくった。
「佐伯家のご夫婦は魚料理を、本日はスズキの――」
料理長がメニューについての説明をする。
けれど、私の耳にはそれが右から左に流れていく。
名簿の中に、彼の名前を見つけたのだ。
『幾美 慧悟様』。
並んで、『城殿 彩寧様』。
――本当に、ご婚約されたんだ。
連名で書かれるのは、ご一緒に、の意味。
オーベルジュで働き始めてから、2週間。
ついに、この日がやってきた。
「前埜さん、デセールの説明をお願いします」
「はい!」
名を呼ばれて、立ち上がる。
私は、このオーベルジュの、デセール部門のシェフなのだ。
「佐伯家のご夫妻には、ご予約の際にぜひと打診のあった――」
料理長とは、今朝のうちに打ち合わせをしてある。
それを、ここで働くスタッフに共有し、失礼のないようお迎えできるようにする。
それが、このミーティングの目的だ。
「それから、私事で恐縮なのですが、幾美家の慧悟様、城殿家の彩寧様には、私がデセールをお持ちいたします」
これも、今朝料理長に申し出たことだ。
二人のご婚約を祝福し、ウェディングケーキを作りたいと伝えたかった。
「ご交友があるのなら、ちゃんとご挨拶した方がいいからね」
料理長はそう言って、私の申し出を許可してくれたのだ。
「以上、本日もよろしくお願いいたします」
料理長の声が響く。
私も、今日も最高のデセールを楽しんでもらおうと、自分に気合を入れた。
オーベルジュの総料理長・巽料理長の言葉に、私は今日の予約者名簿をぱらぱらとめくった。
「佐伯家のご夫婦は魚料理を、本日はスズキの――」
料理長がメニューについての説明をする。
けれど、私の耳にはそれが右から左に流れていく。
名簿の中に、彼の名前を見つけたのだ。
『幾美 慧悟様』。
並んで、『城殿 彩寧様』。
――本当に、ご婚約されたんだ。
連名で書かれるのは、ご一緒に、の意味。
オーベルジュで働き始めてから、2週間。
ついに、この日がやってきた。
「前埜さん、デセールの説明をお願いします」
「はい!」
名を呼ばれて、立ち上がる。
私は、このオーベルジュの、デセール部門のシェフなのだ。
「佐伯家のご夫妻には、ご予約の際にぜひと打診のあった――」
料理長とは、今朝のうちに打ち合わせをしてある。
それを、ここで働くスタッフに共有し、失礼のないようお迎えできるようにする。
それが、このミーティングの目的だ。
「それから、私事で恐縮なのですが、幾美家の慧悟様、城殿家の彩寧様には、私がデセールをお持ちいたします」
これも、今朝料理長に申し出たことだ。
二人のご婚約を祝福し、ウェディングケーキを作りたいと伝えたかった。
「ご交友があるのなら、ちゃんとご挨拶した方がいいからね」
料理長はそう言って、私の申し出を許可してくれたのだ。
「以上、本日もよろしくお願いいたします」
料理長の声が響く。
私も、今日も最高のデセールを楽しんでもらおうと、自分に気合を入れた。