シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「でも……」

 短くなった呼吸の合間に、言葉を紡ごうと声を出した。
 けれど、私は続きの言葉を紡げない。

 慧悟さんの想いを、私が受け取っていいのか。
 否、この愛は受け取ってはいけない。
 受け取っていいはずがない。

 財閥御曹司(慧悟さん)パティシエール(庶民の私)は結ばれない。
 ――たとえ、どんなに想い合っていたとしても。

 けれど、首を傾げこちらを覗く慧悟さんに、心が惹かれてしまう。
 どうしても好きだと、心が言う。

 この恋心は捨てなくてはといくら自分に言い聞かせても、慧悟さんに見つめられるだけでその決意ははじけ飛んでいく。

「好き……」

 苦しみながら、負けてしまい紡いでしまった。
 絶対に言ってはいけない、禁断の二文字を。

「僕も好きだった。希幸のことが、ずっと前から大好きだった」

 慧悟さんの右手が優しく私の頬をかすめ、優しく慈しむように輪郭をなぞっていく。
 その触れられ方にぞくぞくとして、顔が、身体が全部火照り出す。

「で、でも慧悟さんには彩寧さんが――」

 言いかけた言葉は、飲み込むほか無かった。
 突然近づいた慧悟さんの身体が、顔が、唇が、私の言葉を塞いだのだ。
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