シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 優しくおろされると、ふわっとスプリングが軋む音がした。
 どうやらベッドの上らしい。

 明かりの点いていない部屋の中には、窓から月の光だけが差し込む。
 慧悟さんは私にキスを落とし、そのまま優しく押し倒す。
 暗がりの中でも彼を感じる幸せに、私は衝動的にキスを返した。

 シーツに両腕を縫い留められ、降り注ぐキスの嵐に身をゆだねる。
 絡めた舌から伝わってくる、彼の想いを受け止めるのに必死になった。

 全部、こぼさずに受け止めたい。
 私も、同じくらいに想いを返したい。

 慧悟さんの手が私の背に周り、私の腰エプロンをはぎ取っていく。
 そのまま胸元に触れた手は、優しくゆっくりとコックコートのボタンを外した。

 4月の夜は冷える。
 けれど、私の肌は汗ばんでいた。
 ぴたりと密着した慧悟さんとベッドの上で絡まり合えば、そのまま快感を探られてしまう。

「慧悟さん……」

 名を呼べば、優しく私の唇に触れてくる。

「希幸」

 名を呼ばれるたびに、胸がぎゅうっと掴まれたように苦しくなる。
 優しい律動は、余計に私の心を乱した。

 きっとこれは、一夜限りの過ち。
 けれど、抱いてしまった恋心は、知ってしまった快感は、慧悟さんを身体ごと全部受け入れてしまう。

 たった一度の思い出でいい。
 ずっと好きだった彼に抱かれている私は、狂おしいほとに満たされる。

 好きだから、もっと愛して欲しい。
 溢れる想いは止まらない。
 同じ気持ちだったのだから、今日だけは許してください、神様――。
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