シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「そんな、恐縮です……」

 私はそんな人格者ではない。
 間違いを犯してばかりの、ダメな人間なのに。
 オロオロしていると、植え付けを終えたオーナーはその葉を優しく撫でた。

「植物も同じ。こうやってせっかく植え付けたズッキーニも、花が咲いても実がならない、実がなっても大きくならないことがある。そうならないために、じゃあ人工授粉させてみようって、雄花を剥がして受粉させるんだけれど、それだけじゃうまく行かない。やっぱり愛情って大事だと思うんだよね」

「愛情……」

 口の中で呟くようにそっと言うと、しゃがんでいたオーナーはその場に腰を下ろした。
 立てた両膝に腕をつき、首にかけたタオルで軽く軍手の土を払う。

「くだらないけれど、昔話をしてもいいかな?」

 私は隣にしゃがんだまま、コクリと頷いた。
 オーナーは空を仰ぐ。藍色の空が、だんだんと明るくなってゆくところだった。

「昔、あるところに、一人の素敵な女性がいました――」
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