シュクルリーより甘い溺愛宣言 ～その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない～

　――ある男が、彼女に恋をしました。彼女も自分の気持ちに応えてくれて、二人はお付き合いをはじめました。けれど、男の両親は、二人のお付き合いに酷く反発しました。
　そこで、男は両親に言いました。独り身を貫き、誰とも結婚をしない。その選択をすることで、彼女を生涯愛しぬこうと決めたのです――。

「後悔していないかって言われたら、嘘になる。けれど私は、彼女を愛して幸せだったんだよ」

　オーナーの物語は、あまりにも自分と重なりすぎる。
　私の場合は、一夜を共に過ごしただけだけれども。

　慧悟さんとのことが頭をめぐり、考え込んでしまったらしい。黙っていた私の顔を見て、オーナーは「顎まで皺が寄ってるよ」と笑った。

「私も話がそれてしまったね。でも、愛情の持つ力は、それだけ素晴らしいものだと、私は思うんだよ」

　オーナーは言いながら、また視線を空に向ける。　

　彼は想い人と結ばれなかった後悔をどう乗り切ったのだろう。
　訊きたいけれど、聞けない。

　すると、しばらくの沈黙の後、オーナーがこちらを振り向いた。