シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「どれも素晴らしいな」

 幾美家の応接室。
 テーブルに並べた、私のドルチェは四品。
 ソファに座ってそれらに口をつけ、旦那様が満足そうに言った。

「ええ、本当に」

 隣に座った奥様も、にこやかな笑みを浮かべる。
 テーブル斜め前に立った私を、見上げて。

「ありがとうございます!」

 腰を折り、それから膝をついて彼らより目線を低くした。
 テーブルに並べたドルチェへの、意見を聞くために。

「この中から二品程度に絞っていただきたく、お持ちいたしました。パーティーでは飾り付けも飴細工などを使い華やかな――」

 話しながら、うーん、と旦那様が首をひねるのが見え、私は言葉を止めた。

「どうかなさいましたか?」

 何か足りなかったか。
 ごくりと、唾を飲み込む。

「いや、ここから2つを選ぶのか、と思ってね。悩ましいよなぁ、恵利」

 旦那様に話を振られ、奥様も「そうねぇ」と指を顎に当てた。

「私はね、このビスキュイがとても気に入ったの。甘すぎなくて、上品で。ローズマリーも、今回のパーティーに最適だもの」
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