シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 総料理長は私がオーベルジュに出向いたその日、私の腕を見てすぐにシェフ候補からシェフへと格上げしてくれた。
 それで、今ではオーベルジュで提供するデセールは私が監修するようになった。

 日本に戻ってくることは慧悟さんには内緒だった。
 代わりに、母と慧悟さんの婚約者である彩寧さんには伝えていた。
 慧悟さんには秘密にしてほしい、とお願いして。

 彩寧さんは、私がまだ幾美家のパーティーに転がり込んでいた頃から、仲良くしてくれた素敵なお姉さんだ。
 もちろんその頃は、彼女は慧悟さんと仲の良い友達であり、彼の婚約者だなんて微塵も思っていなかった。

 突然日本に私が戻ってきていたら、慧悟さんはどんな顔をするのだろう。
 そんなことを考えながら、デセール用のフルーツの選定を終える。

 春のフルーツは、どれも優しくて甘い香りがする。
 私の記憶の中にいる、あの日の慧悟さんみたいだ。

 どんな盛り付けにしよう。
 私は考えながら、イメージを膨らませるために一度部屋に戻り、スケッチブックを取りに行くことにした。
 オーベルジュの端に併設されている社員寮に住んでいるのだ。
< 7 / 179 >

この作品をシェア

pagetop