シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 やがてパーティーが始まると、私は給仕に追われていた。
 次々と無くなるのはローズマリーとバジルの焼き菓子(プティフール)
 次いで、マカロン・パリジャン。

 補充をしながら、見栄えにもこだわって修正し  ていく。
 会場スタッフの手も借りながら、どんどんと減っていくドルチェに、私は安堵していた。

 もちろん、きらびやかなドレスにスーツの紳士淑女に、オーベルジュの名前を出して宣伝するのも忘れない。
 笑みを顔に貼り付けながら、しなければならないことの多さに目が回り、その忙しさで胸のさもしさは忘れられる。

 けれど、ふとした瞬間に自分が着ているのはコックコートであって、ドレスでないことを意識してしまう。

 いつでも目線は、慧悟さんを追っていた。
 背の高い慧悟さんは、広い会場の中でも一人頭ひとつぶん飛び出ていて、どこにいても目に入ってしまう。
 挨拶周りに忙しい彼は、なかなか食事には手を付けられないようだった。

 それもそのはずだ。
 このレセプションパーティーは、慧悟さんと彩寧さんのご婚約の発表を兼ねているのだから。
 高砂台での発表は無かったものの、慧悟さんの隣には常にローズレッドのドレス――彩寧さんが並んでいるのが見えた。
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