シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 財閥同士の社交パーティー。
 これだけきらびやかな世界にいられるのは光栄なことなのに、やはり気分が沈んでしまう。

 向こう側(財閥側)と、こちら側(庶民側)
 線引きされたその線を、私は超えることを許されない。
 頭の一つ高い慧悟さんの醸す雰囲気は、財閥御曹司ならではのオーラ。
 その隣に佇み、時折先方の話に上品な笑みを浮かべる彩寧さんは誰がどう見てもお似合いだ。

 私は、自分の見ていた世界の小ささを思い知る。
 慧悟さんは、手の届かない、雲の上のまた上の人。
 遠く遠くにいる人なのだと、改めて思い知った。

 もちろん、そんな人の隣に自分がいていいわけがない。

『慧悟のことは好きでもいい、チョコを贈ってもいい。だけど、一緒にはなれないの。ごめんなさいね』

 失恋したあの日に、奥様からもらった言葉を胸の中で繰り返していた。
 どうして彼の隣に、私が立てるだなんて思ったのだろう。

 見せつけられた世界の差は、あまりにも大きくて。

 あの夜、慧悟さんは再会の熱でおかしくなってしまっただけ。
 そんな彼を受け入れ、抱かれてしまった自分は身の程知らずもすぎる。
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