シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「希幸ちゃん!」

 パーティーも終盤になってきたところで、明るい上品な声が飛んできた。
 彩寧さんだ。

「お疲れ様です。あの、ドルチェ……」

 彩寧さんは私の横のドルチェの盛られていたテーブルを見る。ほとんど何も残っていなかった。

「あーもう、来るのが遅くなっちゃったせいね。まあ、私も今日はお迎え側だったから仕方ないけれど――」

 彩寧さんはそこまで言いかけて、歯切れが悪そうに口をつぐんでしまった。

「あ、あの! ドルチェなら取ってあるんです!」

「本当!?」

 途端に、彩寧さんの目が輝き出す。
 裏に回ろうとすると、彩寧さんが申し訳なさそうにこちらに眉尻を下げた。

「えっと、言いにくいのだけれど、……慧悟も分もあるのかしら?」

 胸に切なさがやってきて、笑顔が崩れそうになる。
 慌ててパティシエールの仮面を張り付けた。

「はい、もちろん。お二人のために、特別に用意してきたんです」

 安堵の笑みを浮かべた彩寧さんに背を向け、特別なプレートを取り出そうとかがんだ。
 そんな私の背中に向かって、彩寧さんは言う。

「慧悟ね、今は二社の社長取締役だけれど、来年にはもう一社担当が増えそうで。そりゃ、財閥の嫡男だから忙しいのは仕方がないのかもしれないけれど、少しくらい幼少の頃の思い出に付き合ってくれてもいいのにね。仕事バカなのよ、彼。希幸ちゃんのことだって、誰よりも大切なはずなのに」

「いいんです、今日はそういう場ではないですし。それに、お仕事の方が大事ですから」

 言いながら、彩寧さんにお皿を差し出した。
 ホワイトチョコレートに記した、私の想いと共に。
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