シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「これ……」

 彩寧さんがごくりと唾を飲む。
 私は驚いてもらえたことに満足した。
 胸は痛いけれど、こういう装飾もできるということを知ってもらえれば、ウェディングケーキへの期待もその分していただけるはずだ。

「今日のパーティーが、お二人のご婚約のお披露目も入っているとお伺いしました。なので、私からのお祝いのプレートを――」

「ありがとう。私ね、ホワイトチョコレートって大好きなのよ」

 彩寧さんはさっとホワイトチョコレートを手に、二つに割る。
 文字の描かれた部分を口に含み「美味しい」と一言。

「ウェディングケーキも期待していてくださいね、とびきりのを作りますから!」

 複雑な感情が溢れてしまいそうになり、慌ててできる限りの笑顔でそう言った。
 頭の中で、ウェディングケーキはホワイトチョコレートをテンパリングしてコーティングしよう、などと無理やり考える。

「やだ慧悟、まだ話してる――」

 会場内をきょろきょろ見回し、目的の人を見つけた彩寧さんはため息をこぼす。
 私も彩寧さんの視線の先を見た。
 不意に、慧悟さんと目が合ってしまった。

 慌ててさっと視線をそらす。
 胸が、ドキリと跳ねてしまった。

「彩寧さん、これ慧悟さんにも渡して頂けますか? 私、もう片付けに行かなくてはならないので」

「え、希幸ちゃん……?」

 プレートを彩寧さんに押し付け、「失礼します」と頭を下げる。

 私はそのまま傍にあった空のデリカバットを手にすると、身を翻し会場の外に向かった。
 ズキンズキンと、胸を鮮烈な痛みが襲う。

 どうしても、二人の婚約を受け入れられない。
 そんな自分のさもしさを、きらびやかな会場の誰にも悟られたくなかった。
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