シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「前埜さん、目が覚めたんですね」

 白衣を着た人物が入ってくる。
 彼はきっと、医者なのだろう。

「はい、あの、えっと……」

 何か言わなくてはと口を開いた私を、お医者様は手で制した。

「大切なお話があるので、お連れ様は離席していただけますか?」

 お医者様の言葉に、慧悟さんは顔を歪める。
 けれどそれは一瞬で、すぐに医者に向き直って言った。

「僕は彼女の兄みたいなものなので、そばにさせてください」

 その言葉に、お医者様が眉をハの字に曲げる。

「前埜さんも、よろしいですか?」

 なんのことか分からず、ただいっぱいいっぱいな頭では「はい」と返すことしかできない。

「では――」

 お医者様が、ゆっくりと口を開いた。

「前埜さんが倒れた原因は、貧血です。その主たる原因なのですが――前埜さん、妊娠されているかもしれません」
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