シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~

15 波に飲まれてしまえば

 身体は元気だったので、そのまま婦人科へ向かった。どうやらここは、ベリが丘の総合病院らしい。
 ついてきた慧悟さんを待合室に残し、一人婦人科の診察室の中に入る。

 診察台に上がり、エコー検査を受けた。
 診察台の横にある、モニター。その画面に白と黒に映るのは、超音波で探られた身体の中。
 ぴくんぴくんと動く、小さな物体。そこから聞こえる、少しばかり早い心臓の音。
 それは、私の中にあるはずなのに、私のものじゃない。

「ご懐妊ですね」

 何でもないことのように、お医者様はそう言った。
 本来なら喜び、嬉しさで胸いっぱいになるのだと思う。
 けれど、私はその事実を受け止めなければと必死だった。

「希幸、どうだった?」

 待合で待っていた慧悟さんが、診察室を出てきた私に駆け寄る。

「うん……」

 言葉が紡げなくて、うつむいた。
 言葉の代わりに、お腹を撫でた。

 ここに、赤ちゃんがいる。
 身ごもってしまった。彼との子を。

「とりあえず出ようか、希幸」

 慧悟さんはそっと私の両肩を支える。
 私がこくりと頷くと、慧悟さんはそのまま私を駐車場まで連れてってくれた。

 *

 乗せられたのは慧悟さんの車だった。
 左ハンドルの高級車。
 助手席に座った私は、エンジンをかけゆっくりと走り出す車の中で、俯きただ黙っていることしかできない。

 口を開いたら、色々な思いが溢れてしまいそうだった。
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