シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「そんなの、絶対にダメ!」

 思わず慧悟さんを突き飛ばしてしまった。

 私が諦めれば、それで済む問題なのだ。
 慧悟さんに、未来を捨てて欲しいわけじゃない。

 見上げた慧悟さんの瞳から、光が失われた。
 私は突き飛ばしてしまった手前、気まずくて視線をそらせた。

「僕は、希幸といたいんだよ」

「でも……」

 うまく言葉を紡げない私は、そのまま黙ってしまう。
 すると、私の言わんとしたことを理解したのか、慧悟さんは「うん」小さく呟く。

「家のことは、何とかする。それは、今までもしようとしてきたことだから、心配しなくていい。でもね、」

 私の不安を取り除くような言葉に、顔を上げた。
 あの日、私が恋をした王子様が、春の日差しの中、私に優しくふわりと微笑む。

「希幸から離れるのは、僕が敵わない。だから、僕の手の届くところにいて欲しいんだ」

「手の、届くところ……?」

「そう、それだけでいい」

 慧悟さんは、そう言って私の手を取る。
 じっと私の目を見つめる。

「仕事も家のこともちゃんとする。だから、一緒に暮らそう、希幸」
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