シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 互いにシャワーを浴び、ベッドに入る。

「ほら」

 慧悟さんは当たり前のように腕を広げ、私に乗るように促した。
 ちょこんと頭を乗せれば、幸せな温かさに包まれる。

「体調は大丈夫? 無理はしてない?」

 聞きながら、慧悟さんは私のお腹を優しく撫でた。
 こくりと頷けば、慧悟さんは満足そうに笑みを浮かべる。
 それからぎゅっと、優しく私を抱きしめてくれた。

「希幸は凄いよ。こんなに小さいのに、お腹に僕らの天使を抱えてる。それでいて毎日素晴らしいデセールを生み出しているんだから」

 くすぐったいくらいの幸せに包まれ、胸がいっぱいになる。

「おやすみ」

 慧悟さんの唇が、私の唇に掠めた。

「おやすみなさい」

 言いながら、目を閉じる。
 怖いくらいの幸せに満たされている。
 こんな毎日が、永遠に続けばいいと思ってしまう。

 けれど、目を閉じればその闇に浮かぶのは不安だ。

 慧悟さんは、これからどうするつもりなんだろう。
 幾美家を、どうするつもりなんだろう。

 本当に幾美家を捨ててしまったらどうしよう――。

 全部、あの日のせい。
 全部、私のせい。

 ふと、お腹に手をやった。
 慧悟さんは『天使』と呼んでくれたけれど、本当に天使なのだろうか。
 私の『わがまま』なんじゃないか。

 だったら――。

 けれど、堕ろしたいだなんて、今更言えない。

 そんな自分の弱さが、辛い。
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