強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 エメラルドの瞳を涙の膜でキラキラ輝かせ、まるで「私、怒っていますよ」とでもいうようにこちらを睨む彼女の可憐な様子に、俺は呼吸すら忘れて見入った。
 すると、そんな俺の反応に彼女はなにを思ったか、握りしめた小さな拳でポカンとひとつ俺の胸を叩き、プイッと顔を背けてしまう。

「ラインフェルド様のばかっ!」

 しかも顔を背ける際、最強に可愛らしい罵り〔?〕付きときた。

 ヴッ! なんだそれは!? いくらなんでも可愛すぎやしないか!? 子猫だってもっとマシなパンチを繰り出すだろう。これはいったい、なんのご褒美だ?
 愛する妻から貰った可愛らしいパンチと『ばかっ』は、ある意味凄まじい破壊力でもって俺の胸を打ち抜いた。

 ……ぐぬぬっ、妻の可愛さが危険だ。

 こうして俺は、今日も今日とて最愛の妻と共に過ごす幸福を胸に刻む。
 この結婚は神から与えられた僥倖で、彼女との結婚生活は俺にとって至上の喜び。

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