強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 それから、どれくらいが経っただろう。
 きつく閉じていた瞼を開けて、まず視界に飛び込んだのは朧に霞んでいく魔獣の姿。目の前の魔獣は、今にも輪郭が空気に溶けて消えそうに薄くなっている。そんな魔獣の胴部には、陽光を受けてギラりと光る剣が突き刺さっていた。

 ……え? どういうこと?

 剣は寸分のズレもなく腹の瘴気溜まりを貫通していた。
 目線をさ迷わせて下に巡らせると、フランソワ殿下が地面に腰を抜かしていた。怪我はなさそうだった。……よかった。
 今度は視線をゆるりと斜め上方に向ける。

『すぐに医者がくる!』

 ラインフェルド様が横から私の体を支え、もう片方の手で魔獣の鉤爪で裂かれた上腕を強く握って圧迫止血しながら叫んでいた。

 ……あぁ、そうか。あの剣は、ラインフェルド様が繰り出したのか。

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