強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 上腕に醜い傷跡を残した私との結婚を、フランソワ殿下が拒否したそうだ。そのため、殿下に代わってあの日の安全責任者であり、聖女と婚姻を結ぶのに身分的にも支障がない王弟、ラインフェルド様が王命により私の新たな婚約者になったのだ。

 まさか私の浅はかな行動が、前世の推しにこんな理不尽を強いることになるなんて思ってもみなかった。いくらラインフェルド様が責任感の強い人だとはいえ、あまりに大きなお荷物を押し付けた恰好だ。

 本音を言えば、彼との結婚に際してほんの少し期待して、『もしかしたら小説の展開とは違うルートを辿って、円満な夫婦になれるのではないか』そんな浮かれた気持ちを抱いたのも事実。けれど初夜の晩も一年間の結婚生活の中でも、彼が私を妻として求めてきたことは一度もなかった。押し付けられた政略妻なのだから当然のことで、そのことに落胆も不満もない。ただ私が彼にとって不要の妻だと改めて認識するには十分で……。

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