強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 彼は玄関ポーチから包みを取り上げると中から少し年代を感じさせるボンネットを取り出し、私に向かって差し出した。

「……それは!」

 ボンネットは型こそやや古めかしいが繊細なレースで縁どられた洒落た意匠で、変色や型崩れもなく美しい。丁寧に保管されていたことが窺える。
 私は以前、そのボンネットを王城に展示された国王一家の肖像画の中で見たことがあった。今は亡き王太后様──ラインフェルド様のお母様が被っていた物だった。

「どうした?」

 なかなか受け取ろうとしない私に、ラインフェルド様が首を傾げる。

「いえ、大切なお品とお見受けします。私などがお借りするわけには……」
「おかしなことを言う。俺が君に使ってほしいから渡している。持っておけ。邪魔なら車内に置いておけばいいだけだ」

 彼は淡々と答え、私の手にボンネットを握らせた。

「邪魔だなんてとんでもない! 大事にします」

 嬉しくて、思わず手の中に飛び込んできたボンネットを抱きしめた。
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