強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 私は笑顔で答え、ラインフェルド様に背中を向けて馬車へと踏み出す。その時にほんの一瞬、視界の端を掠めた彼の表情にドキリとした。

「出立ー!」

 私が馬車に乗り込むと、レックスさんの声を合図に部隊が動きだす。
 あっという間にラインフェルド様が遠くなる。だけど実際の姿が見えなくなっても、私の脳裏には最後に見た彼の姿が鮮烈に焼き付いて離れない。

 なんでだろう? ラインフェルド様はまるで置いてけぼりにされた幼子みたいに心細そうに見えた。彼が私に向けていたどこか不安げで、縋るような眼差しが、ひどく落ち着かない思いにさせた。






 出発から七日目。

 今も別れ際に見たラインフェルド様の表情が頭から離れない。

 ……彼は今頃、なにをしてるのかな。もしかしたら私が彼のことを考えている百分の一くらいでも、私のことを思ったりしてくれているかしら。

 時間ばかり潤沢な移動中の車内。私はこんなふうに彼のことばかり思い返して過ごしていた。
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