強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 振り返れば、私たちは一年間の結婚生活をほとんどすれ違いで過ごしている。夫婦として共に過ごす時間が圧倒的に少なかっただけで、けっして蔑ろにされていたわけではないのだ。むしろ帰宅後は必ず留守中に不便はなかったか聞いてくれたし、予定があえば彼から夕食に誘ってくれた。彼は十分に私を尊重してくれていたのだ。

 それに、彼の熱い瞳もそう。見送りに立った彼の目に籠もった熱量に戸惑ったけれど、よくよく思い返してみると今までも熱量はあったのかもしれない。私自身、政略で娶らせてしまった後ろめたさがあって、彼を真正面から見返すことが難しかったのだから。

 彼としっかり向き合うことから逃げていた……うん、これは私の反省点だ。

「……でも、やっぱりおかしいわ」

 ボンネットのつばをそっと撫でながら独り言ちる。

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