強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
4・聖女のお仕事
空が茜色に染まり始めた夕刻。石造りの簡素な建物が建ち並ぶのどかな田舎町にあって、ひと際目を引く豪邸の広い庭で馬車は停まる。
真っ白な漆喰壁が目に眩しいこの館は、この地で浄化にあたるのに拠点として利用させてもらう町長の館だった。
馬車から降りると、やたらゴテゴテとした装飾で着飾った五十がらみの夫妻と陰気な目をした二十歳すぎの青年が待ち構えていた。
夫婦は私を見るや、お付きのレックスさんから紹介されるのも待たず、満面の笑みを浮かべて直接話しかけてくる。
「おーおー、これはこれは美しい聖女様だ。よくきてくださった。私はアレッポス町長のゴンザレスと申します。今宵は屋敷にて親戚一同を招き、聖女様歓迎の宴を準備しておりますので、楽しみにしていてくだされ」
耳にして眉間に皺が寄る。
聖女派遣の公平性を保つため、聖女の訪問時の接待や礼物等は固く禁じられている。これは広く知られている常識だ。当然、町長もそれを知らぬはずはないのだが。