強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 ジェイコブが指し示す先に、残光を受けて光る湖面が浮かび上がる。ただし水面は透き通った色ではなく、どす黒く変色している。水質もドロリと淀んで見えた。

「なるほど。これでは飲むことはおろか、生活用水としても使うことはできませんね。水の確保にさぞ苦労なさったことでしょう」
「へい。ここいらは良くも悪くもこの貯水湖に頼り切りでしたんで、他に水源などもなく。なんとか溜めた雨水で凌いでおりやしたが、飲み水を確保するのがやっとでして」

 ジェイコブの受け答えは明瞭で分かりやすく、とても好感が持てた。

「そうでしたか」

 ふいに、遠巻きにこちらを見つめる幾つもの視線に気づく。

 なにかしら?

「あー、すいやせん。ありゃあ、うちの近所のやつらですわ。あっしが案内役で呼びつけられたのを見て、聖女様の来訪を嗅ぎつけちまったようで。浄化の邪魔になるようでしたら、追い返してきやすが?」

 ジェイコブが申し訳なさそうに告げる。

「いいえ、このまま見てもらっていて大丈夫です」

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