強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 ジェイコブの申し出に首を横に振る。
 実際、彼らの視線は好奇心こそ剥き出しだが、ジェイコブのご近所さんというだけあってか至って好意的だ。見られていてもまったく問題はない。

 私は町の人たちの視線を受けながら、レックスさんの手を借りてほとりへと下りていく。水際ギリギリにしゃがみ込むと目を瞑り、意識を集中させる。
 ひと呼吸吐きだした後、スッと水面に手を伸ばす。


 ──ピチャン。


 指先が水面に触れた瞬間、全身がふわりと熱を帯びる。清廉な熱は、私の指先からスーッと水面へと流れていく。周囲を静謐な空気が包んでいた。
 そうして体感にして一、二分後。

 ……そろそろいいかな。

 水面から指を引き、ゆっくりと目を開ける。目の前の貯水湖は、水底が透けて見えるくらい透明になっていた。

「終わりました」

 ホゥッと安堵の息をつき、ゆっくりと立ち上がる。直後、周囲で見守っていた人々からワァッ!!と歓声と拍手があがる。

「す、すげぇえ!」

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