強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 自衛団を名ばかりの組織にし、隊員にまともな訓練もさせず武器の支給すらしないでいるのは町長の怠慢だ。そのくせ、町の有事には自衛団を矢面に立たせるのだろう。
 ダメだ、すごくムカムカしてきた。

「ところで町長館の壁はここ数日で壁の塗り替えを行ったようですが、水の確保もままならない中、よく引き受けてくれる業者がありましたね。町の外の業者が引き受けたのでしょうか?」
「あー、あっしらが昨日まで駆り出されてたんですわ」

 ジェイコブが頭をポリポリ掻きながら答えた。

「生活用水の確保に町中が苦慮する中でですか!?」
「お言葉ですが、聖女様を薄汚れてみすぼらしい館にお迎えするわけにはまいりません」

 ギョッとして聞き返した私に、ここまで空気のように付き従っていたニーグが横から答えた。相変わらずキョロキョロとさ迷う目線が私と合うことはないけれど、声にはどこか傲慢さが滲んでいた。

 ……薄汚れて、ね。それは先ほど町長がジェイコブに向けて放った単語と同じだった。

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