強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
5・強面騎士団長、愛妻のもとへと駆ける──!
《少し時間は遡り、フェリシアから離婚話を切り出された翌朝──》
俺はフェリシアの出発予定時刻の一時間前に玄関ホールに立った。そうして息を詰め、彼女が部屋から下りてくるのを今か今かと待った。
このひと晩。俺たち夫婦のこれまでと、そしてこれからについて考えに考えた。
俺はこれまで、政略で好いてもいない男のもとに嫁がされた彼女の気持ちを考慮して関係を急がなかった。ゆっくり彼女の気持ちが俺に向いてくれればいいと、そんな傲慢な思いで日和見を決め込んでいたのだ。
それがどんなに思い上がった独りよがりの考えであったのかを、くしくも「離婚」の二文字が俺に突きつけた。俺の『フェリシアのためを思って』は所詮、体のいい言い訳にすぎなかった。愚かな俺は夫として彼女の心に寄り添い、歩み寄る努力を怠っていたのだ。
今さらながら、彼女を大切に思う気持ちを言葉や態度で伝えてこなかったと気づかされた。心で思ったところで、声にしなければ伝わるはずがないというのに。