強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 彼女にとって俺は、それだけ不義理な夫ということなのか。内心の緊張をひた隠して笑顔で挨拶する。

「おはようフェリシア」
「お、おはようございます」
「ついに出発だな。アレッポスまでの移動は七日間の長丁場だ。体調は悪くないか?」
「は、はい。問題ありません」

 道中の無事を願い言葉をかける俺に、彼女は丁寧に答えてくれたが、少しだけギクシャクして見えた。

 信頼回復の機会がほしくて気ばかりが急くが、純粋にアレッポスまでの長旅を心配する気持ちも大きかった。ただでさえ暑い中、一日中馬車に揺られるのはきついものだ。加えて彼女がこれから向かう南は王国にあって比較的貧しく、道路等の環境整備も遅れている。
 悪路の移動をフェリシアが細い体で七日間も耐え忍ばなければならないと思うと、胸がキリキリした。

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