強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
水を持ったのか問えば、既に馬車に運び込んだと返ってきてホッとする。そして日よけの類を持っていない彼女に、あらかじめ用意してあった母のボンネットを手渡した。亡き母は着道楽で、ドレスの他にも付属品や小物類を多く遺していた。これはその中のひとつで、南に向かう彼女の日よけに最適だと思った。
遠慮するフェリシアに半ば強引に押し付けてしまったが、彼女は宝物のようにボンネットを胸に抱きしめた。
……こんなことなら母のおさがりなどではなく、彼女に似合う新品をいくらだって誂えたのに。
ボンネットを大事そうに抱える姿にホッとした半面、少し悔やまれた。
「それでフェリシア、昨日の件だが──」
逸る気持ちを抑え、ついに核心に切り込もうと口を開いた。
──ヒヒィイン。
ところが、俺が皆まで言う前に馬の嘶きが響き、「挽回のチャンスをくれ」と続けるはずだった言葉は無情にもかき消されてしまう。
遠慮するフェリシアに半ば強引に押し付けてしまったが、彼女は宝物のようにボンネットを胸に抱きしめた。
……こんなことなら母のおさがりなどではなく、彼女に似合う新品をいくらだって誂えたのに。
ボンネットを大事そうに抱える姿にホッとした半面、少し悔やまれた。
「それでフェリシア、昨日の件だが──」
逸る気持ちを抑え、ついに核心に切り込もうと口を開いた。
──ヒヒィイン。
ところが、俺が皆まで言う前に馬の嘶きが響き、「挽回のチャンスをくれ」と続けるはずだった言葉は無情にもかき消されてしまう。