強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 二十九歳の俺よりひと回り年下の妻は折れてしまいそうに華奢で、身長は俺の胸ほどまでしかない。対して俺は二メートルを超す身長で、筋肉の化け物のようないかつい体躯だ。さらに額から頬にかけて走る刀傷が凶悪さに拍車をかけていて、子供と目が合えば高確率で泣かれる。性格も長く軍事畑にあったせいで無骨で、けっして女性に好まれる質ではない。

 そんな俺が無理に触れたら、彼女を壊してしまいそうで怖かった。だから、せめて彼女が俺への心の壁を無くし、受け入れてくれるまでは白い結婚を貫こうと己に誓っていた。

「その。実は私、そろそろ実家に戻らせていただこうと思っております」

 遠慮がちに口にするフェリシアの顔色があまりよくない。もしかすると、王都の蒸し暑さが彼女の体力を削ぎ、健康を損ねているのかもしれない。華奢で繊細な彼女には無理もないことだ。

「ああ。そろそろ夏も盛りだからな。王都より涼しいお義父上の領地に避暑に行き、そちらでゆっくり過ごすのもいいだろう」
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