強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
月明かりを頼りに山道を下り、隣接するアレッポスへ続く街路を駆ける。
テグレンで〝仕事〟を終えた俺は、ひとり部隊を離れフェリシアのもとに向かっていた。
「オルブラン、もう少し頑張ってくれ」
愛馬は俺の呼びかけに応えるように、力強く土を蹴る。
……よし。このまま休まずに進めば、今夜中には着けるだろう。
騎士団長である俺が自らテグレン行きに手を挙げたのはなんのためか。
そんなのは分かりきっていた。すべては愛するフェリシアのもとに行きたいがため。
離婚を突きつけられたまま、大人しく彼女の戻りを待つなど土台無理な話なのだ。
だが、やるべきことは完璧以上にやったのだから誰にも文句は言わせない。俺の手にかかれば、山賊の討伐などほんの些事。山間部に潜む山賊どもは俺がひとり残らず捕らえ、根絶やしにしてやった。
「待っていてくれ、フェリシア!」
俺は今度こそ君に伝える。胸にあふれるほどの想いを言葉と態度で、きちんと君に届ける。
だからどうか、俺にチャンスを──!
愛しい彼女の面影を脳裏に浮かべながら、馬脚を速めた。