強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
フェリシアと想いをひとつにし、初めて口付けを交わした。俺の腕の中で目を潤ませ、乱れた呼吸を繰り返す彼女の姿は、いっそ暴力的なほどの艶めかしさだった。
本音を言えば、口付けの先を望む思いはある。
しかし、いくら最後まで奪われていないとはいえ、男の欲をぶつけられて恐ろしい思いをしたばかりの彼女に情交を強いることは憚られた。なにより俺自身、理性の部分で彼女との初夜はこのタイミングではないと感じていた。
結局、彼女にお湯と着替え、温かい飲み物を用意した後で、俺はひとり別の客間に下がった。
「……フェリシアはもう眠っただろうか」
それにしても、まさか彼女が俺のことをあんなふうに思ってくれていたとは想像もしなかった。
妻の体調を気遣い、労わる。一年の結婚生活の中、俺はそんな当たり前のことしかしてこなかったが、それを彼女は『愛おしい』とそう言ってくれたのだ。俺がもっと早く想いを伝えていたら、今頃はひとつの寝台で体と心を寄り添わせていたのだろうか。