蒼い情熱が導く、あなたの極上な愛に酔いしれたら
I.幻の様な一夜
耳元で聞こえる熱い吐息。
私の身体に甘い炎を灯す。
その指先で触れられる程に、自分じゃない様な艶やかな声が唇から漏れる。
「忘れられない旅にしてやるよ」
囁かれた、低く、冷たいけれども何故か砂糖菓子みたいに甘く聞こえた言葉。
何時迄も大事にしていたって仕方ない。
このまま年老いていくなんて嫌。
30年間生きてきた中で、きっと永遠に忘れられない時間になった。
この瞬間だけの、割り切った後腐れのない関係でもいい。
私の価値は自身が一度理解してる。
あなたから別れを言われるのは辛いから、私から静かに幕を下ろそう。
この美しい島が見せてくれた、幸せな夢だと思って、
あの眩い太陽の様な、あなたを心の奥に潜めて、
また現実に戻ろう。
〝Ευχαριστώ”
慣れない文字でそう綴った。
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