蒼い情熱が導く、あなたの極上な愛に酔いしれたら
彼は私の席に着くとサングラスを外した。
思った通り、整った綺麗な顔立ち。
獲物をねらう獣みたいな鋭い瞳をしていて、だけど何処か優しく上品な雰囲気を感じる。
それがまた魅力的に映る。
「ギリシャワイン。酸味が豊かで美味しいよ」
フッと妖しくも美しい微笑み。オーダーしてくれたワインで乾杯する。
お酒はあまり飲み慣れていない私だけど、自然とワインが進む。
「私って誰からも愛されないんです。友人って呼べる人もいないし、家族でさえー…って暗い話なんてしてごめんなさい。酔ってますね」
「大丈夫。俺で良ければ話を聞くよ」
「いえ、せっかくこんな素敵な場所に来たのにー…嫌なことは忘れていたいんです」
何時の間にか太陽は沈み、夜空には満天の星空が輝いている。
まだ、別れたくない。
そんな私の気持ち、見透かされていたみたいに、
「俺の部屋においで」
彼はまた微笑みをくれる。
これまでの日常だったら、絶対にない誘い。
こんな異国の地で、こんな素敵な男性に、私みたいな冴えない女が誘ってもらえるだなんて騙されてるんじゃないかとは思ってしまう。
何か裏があるんじゃないか、ってー…
散々思いはするけれども、まだ離れたくない気持ちを抑えられない。