蒼い情熱が導く、あなたの極上な愛に酔いしれたら
いけない。
仕事中に耽っちゃうなんて…
「あっ…申し訳ございません。エンゲージリングをお探しですね。ご希望のブランドや…デザインはございますか?」
慌てて手に持っていたチェック表とペンを置きながら言ってしまう。
「…そのリングは?」
「は、はいっ。ブリリアントカットダイヤモンドとパヴェダイヤモンドを配したプラチナ製のエンゲージリングで…」
お客様が尋ねられたのは、ちょうど私が見つめていたリング。
しかも、この男性の声ー…
あの日の彼に似てると思ってしまうのは、彼の事を考えてしまっていたからなのかー…
そう思った時、私は初めてまともに目の前のお客様に視線を移した。
「っ…」
同時に、また彼の姿を思い浮かべてしまう。
艶やかな黒髪。
スラリと伸びた背。
端麗な顔立ち。
鋭くも何処か優しい瞳ー…
今、目の前に立つ男性の様な、サントリーニ島で一夜を共に過ごした彼の姿を。