蒼い情熱が導く、あなたの極上な愛に酔いしれたら

「"高嶺さん”は、このリングが良い?」


え…
どうして私の苗字を知って…?と、思ったけど、直ぐに、あぁ、ネームプレートを見て、と気づく。


「そう…ですね。私個人としては、とても気に入っているリングですが…お相手の方の好まれるデザインなどもお聞かせいただけたら他のブランドも含めて色々とご提案が…」


そんな言葉を言いながら、今更だけどハッとする。

エンゲージリングを求めてるって事は、このお客様には特別な方がいらっしゃるってこと。

もし、

もしも、本当に目の前のお客様が、あの日の彼だったとしたならー…

こんなに辛い接客はない。

別に、あれ以上の関係を望むつもりなんてなかったし、あの旅だけの特別な思い出。
後悔もない。
割り切っているつもりだったのに、考えると哀しくなる。

ああ、またこんな結末?

そんな私は滑稽で、学習能力がない。


< 23 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop