蒼い情熱が導く、あなたの極上な愛に酔いしれたら

ほら、仕事に集中しなきゃ。

このお客様だって、私を見て何か動揺している様子はない。


「"高嶺さん"が1番気に入った指輪で」

「あの…お相手の方の好みもあると思いますし、宜しければ他のエンゲージリングも…マリッジリングと重ねづけも…」

「"高嶺さん"の好みであれば何でも」

「あ、あの…」

「高嶺さん、あなたに贈る指輪だから」

「え…」


あなた、って、私…?

思いもよらない言葉に、真っ直ぐに目の前の彼を見てしまう。

にこり、と微笑む彼。

何度も思い返した微笑みだ。


「もう忘れてしまった、なんて事だったら哀しいな。俺はずっと高嶺さんー…葵の事ばかり想って、ここまで来たのに」

「忘れた…って…」

「あの日の背中の爪痕、まだ消えないんだ」


そっと耳打ちをされる。


「爪…あと…」


爪痕って…

嘘。

本当に?


「サントリーニ島で過ごした時間、俺は鮮明に覚えているけどな」

「…っ!」

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