蒼い情熱が導く、あなたの極上な愛に酔いしれたら
「今日はあなたに大切な事を伝えに来たんだ」
「私に…大切なことって…」
「僕と結婚していただけますか?」
結婚?
私、彼にプロポーズされているの?
「ちょ、ちょっと待ってください…何の冗談ですか…」
「冗談でこんな事はしない。本気だよ」
「私、あなたのこと殆ど…名前さえ知らない…」
「ー…蓮。澤井連」
「さわ…い」
彼の名前を聞いて、引っかかる物を感じた。
"澤井"
この百貨店の名称は"澤井屋"。
澤井グループの傘下にある老舗百貨店。
でも、まさか。
彼と何か関係性があるなんて都合の良い話はない。
ただの偶然よ…
「僕は君が望むものを与えてあげる自信がある」
言葉の通り、こんなに自信に満ちた男性の顔を見たことない。
あの日限りだと諦めた、夢の続きをみたいと望むのは身の程知らず…?
だけど、私は今勤務中でー…
いきなりこんな事ってある?
揶揄われてる?
あの旅では外見も装いもかなり頑張っていたとはいえー…実際の私を見てガッカリしてない?
まさか、初めてだったって事で責任を感じたり?
持ち前の性格もあってか、ネガティブなことばかり考えてしまう。
返答に困っていると、
「勤務中に申し訳ない。戸惑うのも無理はない。また改めて話したい」
「あ、あのっ」
「承諾頂けるなら指輪は高嶺さんが一番気に入った物を選んで。一旦、失礼するね」
そんな言葉と一緒に微笑むと、売り場から離れて行ってしまった。