蒼い情熱が導く、あなたの極上な愛に酔いしれたら
これから、豪華な食事と高級なお酒を愉しんでー…あの夜の続きが?
なんて少しでも思ってしまう自分が恥ずかしい。
でも、何だろう。
この改まった様な空気感はー…
単純に喜べない何かがある気がしてならない。
哀しいけど今までの経験上、糠喜びなんて出来ない。
そう構えてしまっていると、
「早速ですが早急に進めなければいけない案件の為、今後の事について話をしましょう。僕が貴女が務める百貨店の次期社長であると言うことは把握されていますか?」
「はい……」
「その事を踏まえて僕の提案に同意していただけるのなら記入していただく書類があります」
テーブルの上に出されたのは婚姻届。
本当に彼は私と入籍するつもり……?
だけど、プロポーズされるにしても何だかあまりにも事務的で仕事の手続きみたい。
昼間の売り場では、あの大胆な行動もあってか、まだ情熱的なものを感じたけどー…
一連の流れを見ると計算尽くされたプロジェクトみたいだと思ってしまう。
目の前にいる、彼の気持ちが見えない。
疑問に思うことだって沢山ある。
「あの、私のこと何時から…?名前だって告げてなかった筈なのに…」
「あらゆる手を使って自分が持つ情報網を駆使しました。それに関しては治外法権みたいなものと捉えてください」
「え…」
「というのは冗談ですけど、一番の手がかりはこれです」
スーツの内ポケットから取り出されたのは、
澤井屋百貨店 宝飾売場
高嶺葵
と書かれた名刺。