蒼い情熱が導く、あなたの極上な愛に酔いしれたら
「あの高嶺さんが珍しく一週間以上も有給取って休んでたって聞いたけど……え、そこで高嶺さんが出てくるって、あの噂やっぱり?」
「だって欠勤なんて論外、有給は上に言われてやっと取得するようなヒトが私と彼が付き合いだしたって広まった途端に急な有給申請だったらしくてぇ」
「それってショックで寝込んじゃったとか?」
「分かんないけどぉ、加藤さんは優しいから、ああいう選ばれないタイプはすぐ勘違いしちゃうんだろうなぁ〜あの歳でも男性経験ないタイプと思うもん」
甘ったるい声で話す女子社員が、そう言って得意げに笑った時、
ガチャン…!
私は持っていた、お冷グラスを倒してしまった。
そう。
私は、営業部主任の加藤さんに密かに思いを寄せていた。
加藤主任は私よりも三歳年上で、私が入社して初めて配属された紳士服売り場のリーダーで、接客に慣れない私をよくフォローして指導してくれた。
所属が別になっても館内で顔を合わせれば、こんな私に会話をしてくれて、気にかけてくれた。