蒼い情熱が導く、あなたの極上な愛に酔いしれたら
Ⅶ.偽りの花嫁
「あの人って高嶺さ…澤井夫人よね?」
「何か呼び方に困るよね…っていうか入籍ってすんでるの⁇」
「先週で退職したんじゃなかったの⁇」
「それがね、今度澤井屋で新規オープンするブライダルサロンで挙式や披露宴の準備をするみたいよ。ほら、エンゲージもマリッジリングも新社長が直々にだったでしょ?」
「あれにはホントびっくりしたよね!」
出勤ではなく澤井屋に入ると、そんな声が聞こえてきた。
今日は打ち合わせや衣装選びの日。
ただ、私はお客さんという立場とは言えないから裏口から入り従業員通路を通る。
エレベーターを待つ間の視線が痛い…
待つのをやめて階段を使おうとした時、
「ほんとに…何かさ、妬み通り越えて羨ましく思えちゃうよねぇ」
「新社長、敏腕そうだし何よりルックスも素敵すぎるしねぇ…」
そんな声も耳に入った。