蒼い情熱が導く、あなたの極上な愛に酔いしれたら
そんな華やかな彼女達とは真逆で、私はというと社会人として最低限の身だしなみを保つ程度のメイクに、接客業なのに人付き合いは苦手。
加藤さんのこと云々だけじゃなく、彼女達にとっては別人種の疎ましい存在なんだろう。
別に私が彼女達に何かした訳でもないのに、岬さんの恋人になった事も知らずに笠井さんに思いを寄せていただけなのに、こんな風に嘲笑われて、でも何も言い返せなくて、情けなくて惨めだって―…
そう思うけれども、少しの休暇を経て、ここにいる私は、そんな事もうどうにも良くなっているって気付く。
社員食堂の窓の向こうに見える空を見つめ、差し込む太陽の光を感じると思い出すのは、宝石箱を開けた様な煌めく時間のこと。
〝もう全てどうでもいい”
〝とにかく、現実を忘れるような心地の良い何処かへ行きたい”
あの日、加藤さんと岬さんから逃げた私は、ふと目に留まった海外旅行の広告をきっかけに有休を取って旅に出ることを決めた。