蒼い情熱が導く、あなたの極上な愛に酔いしれたら

でも、今まで彼氏の“か”の字さえ縁がなかった自分だもの。

贅沢は言わずに、せめて美味しい物を食べて気持ちを満たそう。

そんな思いで、街の西側にあるレストランに辿り着きサンセットを見つめていた。

そんな時だった。

ふと、隣の席に着いた男性が目に入った。

艶やかな黒髪をしたポロシャツにジーンズ姿の男性。

サングラスをしているけれども、端麗な顔立ちが分かる。

現地の人には見えない。

旅行者…?

私と同じ一人旅…な訳はないよね。

こんなにも纏う雰囲気だけでも素敵な人だもの…

ああ、せめて、サングラスに隠れた姿も見れたら…

と、

サンセットから隣に座る彼に瞳が奪われてしまっていた瞬間、


「…っ!」


こっちを見た彼と瞳が合ってしまった。

やだ…

勝手に見つめて、気持ちのワルい女だなって思われたらどうしよう…

瞳を逸らさなきゃ…

そう思うのだけど、視線が動いてくれない。

と、


「Καλησπέρα」


男性が私を見て言った。

< 9 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop