年上幼馴染の一途な執着愛
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「あの時俺、お前ん家行く前に家で母親と揉めててさ。怒鳴って家飛び出したんだ。だからめちゃくちゃ機嫌悪くてさ」

「……そうだったの?」

「あぁ。それで、どうしようもなくむしゃくしゃしてて。早く公園行って思いっきり遊んでスッキリしたくて。でも星夜遅いし、出てきたのは星夜の妹だし。自分より小さい子の扱いなんて知らないからずっとそこにいる夕姫にどうしたらいいかわかんなくて困ってた。それで、俺より小さいしちょっと怒鳴ればいなくなると思ったんだ。今思うと最低だけどな。でも、まさか怒鳴り返されると思ってなくてビビった」

「あの時は、本当にごめん。一人で溜め込んでたものを全部日向にぶちまけちゃったの」

「いや、謝るのは俺の方。完全な八つ当たりだった。本当ごめん。でも俺はあの時の夕姫が、かっこいいと思ったんだ。俺みたいな自分よりデカくて年上の男に怒鳴られても言い返せる強さが、かっこいいと思った。それと同時に、泣きながら俺のこと睨んで言い返してくるのを見て、"これ以上泣かせちゃダメだ"、"俺が守らなきゃ"って思った。初対面なのに、なんでかそう思った」

「……」

「目が覚めた気がしたよ。それまで何も考えずにただ思ったことを喋ってたけど、それじゃいつか取り返しのつかないことになるかもしれないって気が付いた。夕姫が泣いてんの見てたら、馬鹿みたいに動揺した。俺、なんでこんな小さい子泣かしてんだろうって。何やってんだって。年下の子に八つ当たりして泣かせて、最低だなって。だからその後、夕姫の機嫌が治って笑った時にその笑顔を見てギャップに惚れた。泣いた後だから目も鼻も真っ赤だった。それなのにあまりにも綺麗に笑うからびっくりして、可愛くてたまんなくて。心臓持ってかれたよ。その時のことが、今になっても忘れられないんだ」

「日向……」


日向がそんなことを考えていただなんて、全く知らなかった。
私の笑顔に惚れてくれたなんて、知らなかった。
あの時、私も自分があんなに泣くなんて思ってなかった。
多分初対面であれだけ号泣したからこそ、今でも日向の前では泣けるんだと思う。
日向なら、どんなに酷い泣き顔を見せても大丈夫だって思える。
あの時の感情のままに泣いた顔よりはマシだって自覚があるから。
日向なら優しく寄り添ってくれるって知ってるから。
日向になら、どんな私でもさらけ出せる。そう思うんだ。
でもそれって、もしかしたら結構すごいことなのかもしれない。
あの出会いが、私たちの今にちゃんと繋がっていたなんて。
自分でも、全然気が付いていなかった。
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