年上幼馴染の一途な執着愛
「日向くんも久しぶりだね」

「あぁ。今日はおめでとう」

「ありがとう。ね、日向くんには申し訳ないんだけど、今日和歌も呼んでるの。席は離れてるし、気まずくはないと思うんだけど。一応言っておこうと思って。ごめんね」

「いや、いいよ。二人が仲良かったの知ってるし。そうじゃないかなとは思ってたから」


初めて聞く"和歌"という名前に、思わず反応してしまう。
美春さんの友達、つまり女性。
日向とどういう関係の人なんだろう。
それを聞きたかったけれど、なんとなく学生時代からの友達の輪には入ることができず。
お兄ちゃんも含めて盛り上がる三人の姿を、私は無言で眺める。


「っと、もうこんな時間か。そろそろ行くか」

「……うん」

「じゃあ二人とも、会場で待ってるから」


日向の声に合わせて美春さんに会釈をし、控室を出る。


「二人とも、幸せそうだったな」

「……うん。美春さんとも仲良くなれそうで安心した。すごい綺麗な人だったから見惚れちゃった」


小さく笑いながら並んで歩いていると、


「夕姫、どうかしたか?」


と日向が私の顔を覗き込む。


「え?」

「なんか、元気無い。体調悪い?」

「……ううん。大丈夫。なんでもないよ」


なんとなく、胸の辺りがもやもやしていた。
そんな些細な変化にも気が付いてくれる日向。
いつもなら嬉しいと思うけれど、今は気付かないで欲しかった。

ここはお祝いの場で、こんなに嬉しいことはないはずなのに。
知らない女性の名前を聞いてしまって一人でもやもやしてるなんて、日向には知られたくない。
日向にだって友達はたくさんいるんだから、私の知らない交友関係だってもちろんたくさんある。
それはわかっているし、今まで特に気にしたことなんてなかったのに。

急に、女性の影が見えてしまったからだろうか。
なんだか、妙に気になって仕方ない。
日向は私の様子にあまり納得していないようだったけれど、お母さんたちと合流したためそこで話は一旦終わる。

日向に声をかける人の姿もあり、別れて会場に入った。
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