年上幼馴染の一途な執着愛

嫉妬

新郎新婦が中座している間、私は一人、トイレに向かっていた。
振袖だとトイレに行くのも本当に大変。
着崩れしていないか鏡でチェックしてから出ると、日向の姿が見えて声をかけようとした。


「──ひな」


しかし。


「ねぇ、それが元カノに対する態度?久しぶりに会ったのにさすがに冷たすぎない?」


日向の目の前にいた和歌さんに気が付き、慌てて口を塞いで死角に隠れた。


……私、何隠れてんの……。


でも。


"それが元カノに対する態度?"


そんな言葉を聞いて自然と身体が動いてしまったんだから仕方ない。
そっと二人の方を見ると、何やら揉めているようだった。


「だから──って言ってる──」

「でも──ちょっとくらい──いいじゃん──」

「まだ──にも──それに──」


あぁ、ダメだ。ここからじゃよく聞こえない。
そもそも、こんな風に隠れて聞こうだなんて間違ってる。
やめたやめた。早く会場に戻らないと。
だけど、そのためには二人の前を通らないといけない。
どうしよう……。
しばらく頭を悩ませていたけれど、ずっとここにいるわけにもいかないため意を決して会場に戻ろうと身体を翻す。


──しかし。


「……え……?」


内容はわからないけれど、二人はつい先ほどまで揉めていたはずなのに。
ふと視界に入った日向は、何故だか和歌さんを抱きしめるように腰を支えていた。

その光景が絵に描いたように綺麗で、私は呆然と立ちすくんでしまう。
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